厳密解

『まったく同じ形状の球体が二つあり、同じ条件で地面に向けて落とす。片方は軽く、片方は重い。さて、先に地面につくのはどちら? 空気抵抗は考えないものとする。』
とある小説に書いてあった問題だが、なかなか面白かった。物理を学んだ人間でなくとも答えを知っている人は多いだろう。ガリレオが実験的に証明した有名な問題である。だがこの小説の回答は違っていて、その理由を定性的に説明してあった。具体的内容はネタバレになるので一応伏せておく。で、ここではそれを定量的に示そうと思う。
まず一般的な「同じ」という答えを定量的に導くにはどうするか?質量をm重力加速度をgとすると、
ma=mg\rightar a=g
となって、質量によらず加速度は一定。というか、そのために重力加速度が定義されているのであって・・・。
で、この方程式だが実は少なくとも2つの近似が使われている。一つは地球の質量を∞としている。もう一つは、地球の半径を∞としている。
まずは前者の近似をはずして厳密に解いてみよう。一見物体が落ちるという一体問題に見えるが実はこれは物体を地球の相互作用を示す2体問題である。ので、正確には方程式が2本立つ。物体の質量をm、位置をr、地球の質量をM、位置をR、2体の相互作用をF(r-R)とすると、
\left\{{ ma=f(r-R) \atop MA=-f(r-R)}
となる。ここでさらに、r'=(r-R),R'=(r+R)と座標変換し、物体の方だけを見ると、
\mu a'=f(r')\text{     }(\frac{1}{\mu} = \frac{1}{m} + \frac{1}{M})
という方程式に変換される。これはいわゆる相対座標系と呼ばれるもので、コレの場合は地球から見た動きを描写している。μは換算質量を呼ばれている。f(f)=mgなのでこれを解くと
a'=(1+\frac{m}{M})g
となり、重い方が微妙に速く落ちることになる。
恐らくこれが小説の答えの定量的証明になっていると思われる。定性的な答えは、まあ、小説でも読んでくれ(ぉぉぉ
さて、最初に『近似が2つ使われている』と書いたが、もう一つはどうか?実はこれは問題には関与していないのだが計算してみてちょっとだけ驚いた事実があった。それを厳密に定量的に解いてみようと思う。

つづく・・・・のか?