結晶場(2)

id:n-trino:20050603の続き(になっているのか?)
さて、正八面体の頂点に陰イオンがあるd軌道は2つに割れることが積分計算なしで分かりました。というわけで今回の本題(ぇ)、今回研究であつかう物質の構造がなんと三角格子なのだ。d軌道の周りに正4面体のように陰イオンが合った場合どうなるか?これも群論によって縮退の解けるのと解けないのを分離することは出来ます。しかし残念ながら定量的に群を計算出来る程の知識は持ち合わせていないので定性的判断で頑張ろうと思ったら・・・対象性の相性悪すぎ・・・。d軌道はxyz的に4方向に伸びているのに対し、正4面体は3角形的に伸びているので定性的判断がむずすぎです。
というわけでゴリ押し積分計算で頑張ることにしました。しかしいろいろとクソ大変でした。計算方法自体は非常に単純なんですけどね。単なるクーロン相互作用ですから。d軌道の波動関数から電荷密度を出してそれと陰イオンによる場の影響を積分するだけですから。式であらわすと以下のとおり。
V=\large\int dr \sum_i\frac{e \psi^\dagger(r) \psi(r)}{|r-R_i|}
Rは陰イオンの場所でΨはd軌道の波動関数である。これを各d軌道に関して計算して比べたらよい。これが全く同じ値になればそれは縮退したままということになる。
単なる積分計算なので時間こそかかるかもしれないがプログラム的には余裕だろうと思ったら予想以上にてこずった。まず。具体的なd軌道の波動関数が載っている文献が一つもなかった。嘘だろ?と思わず叫んでしまったがしょうがないので教科書の断片をかき集めて作りました。次、イオンの位置がわからん。正八面体ならそれぞれXYZ軸の上ということで非常に分かりやすかったが、正4面体の頂点の座標ってどこ?一番簡単なのは
(1,1,1)(-1、-1,1)(-1,1,-1)(1,-1,-1)
なのだがこれはちょっと採用しづらい。というのは、陰イオンの一つがz軸方向にいて欲しいからだ。というわけで頑張って回転させましたよ。
(0,0,1)(2√2/3,0,1/3)(-√2/3,√6/3,1/3)(-√2/3,-√6/3,1/3)
というわけで右脳をフル回転させてイメージ完了・・・と。
最後に困ったのが積分範囲。理論上は全区間∞なのだが当たり前だがそんなのは不可能。というわけで無限遠方はどうせ0なんだから原点付近だけを扱えばよい。それに、元々が球対称なのだから積分範囲も球がいいだろうというわけで極座標でやろうということに決め、また、陰イオンの上、すなわちr=Rの点にて発散してしまうのでその内側でストップということに決めた。ここまではいい。さて、3次元積分ということで時間がかかりそうなので練習も兼ねてモンテカルロ積分にしようと思ったのだが・・・・極座標モンテカルロ積分ってどうやるの?あとでちょっと考えたら分かったんですけどね、このときは思いつかずに諦めて普通の積分にしました。
さて、実際の積分なのだけれども何等分すればいいかなと考えていたのだけれども極座標だと結構面倒ということに気がついた。普通の直交座標ならそれぞれXYZで考えたらいいが、極座標は動径方向はともかく、極側は半径によって重さが違う。つまり、外側程同じ角度による長さが違うので、外側ほど細かく取らないと精度が著しく悪くなる。というわけで積分の計算方法もrによって変えることになった。
とまあ、いろいろ苦労して一日潰してプログラムを完成させて実行させて一晩置いておきました。結果を見てビックリ。そもそも縮退しているからといっても数値積分なのであまり期待は出来なかったのだが、なんと8桁ぐらいの精度で5つ中4つが完全に一致した。うそだろ?そんなに精度高いのか?というわけで、z方向に伸びた奴だけやたらエネルギーが高くなって他は依然として縮退したままでした。
さて、実は正4面体と書いたけれども実はそれも怪しい。というのは一つだけ陰イオンが離れている可能性があるのだ。つまり正3角錐というべきなのか?なのでもうちょっと計算が必要だったりする。と言ってもプログラム的には陰イオンの座標をちょっとだけ修正するだけなので簡単なのだが。というわけで今夜、走らせて帰ってきました。明日、結果がでていることでしょう。



ちなみにこの研究、私でなく隣のNさんのなんだけどな。