イジング模型

電子には内部自由度としてスピンというのがある。これは量子力学ならではの量なのだが、イメージとしては自転だとおもってくれればよい。で、電荷をもった物が回転するのだから磁気を発生させる。つまり、電子とは世界最小の磁石なのだ。で、このスピンが物質内で同じ方向にそろうとその物質は磁気を帯びる。つまりこれが磁石なのだ。だから、ある物質の磁気的性質を調べようと思ったら電子のスピンの秩序を調べればよいのである。
で、スピンの秩序を調べる方法(というか模型)の一つとして、イジング模型というのがある。この模型は、隣同士の電子のスピンは同じ方向(もしくは違う方向)に向く性質があり、それ以上離れた電子とは相互作用しない、という模型だ。実際、スピン相互作用というのは隣同士なら大きい値を持つが、一つでも離れるととたんにオーダー単位で弱くなる。なので最近接だけしか見なくとも十分によい結果が見られる。
で、この模型なのだが、1次元と2次元に関しては厳密解が存在する。1次元に関しては大学のレポート課題に出されそうなくらいのレベルである。2次元は変態的であるが(ぉ しかし、3次元に関しては未だ厳密解が出ていない。もし解けたらノーベル賞がもらえるんじゃないかと噂されている。4次元以上に関しては平均場近時で十分らしい。最も、4次元以上なんて応用があるかどうか怪しいが。
で、思うに、もし磁性を調べるために3次元イジング模型を解こうと思うならおそらく無駄だろう。2次元までならともかく、3次元になると長距離においてスピン相互作用以上に磁気相互作用の方が強くなってくるからだ。磁気相互作用というのは、簡単に言えばS極とN極がくっついて同じ極同士が離れるというやつだ。本来ならこれはスピン相互作用よりずっと小さいのだが、長距離相互作用なので距離が離れてもあまり大きさがへらない。なので3次元になってくると距離による相互作用の減少以上にそもそもの電子の数が増えてくるので無視できなくなってくる。(3次元において、粒子の数は距離の2乗に比例する。2次元だと1乗、1次元なら右と左で常に2個)なので最近接スピン相互作用しか考慮していないイジング模型はもはや役に立たない。磁気相互作用を入れて初めて磁気的性質を記せる。
では3次元イジング模型の厳密解を解く意味はないのだろうか?実はそんなことはないらしい。というのは、発端はたしかにスピン秩序を調べる方法だったが実は情報理学等、応用範囲が非常に広いらしく解く価値は十分あるそうだ。
しかし、2次元でかなり変態的なのだから3次元はきっととんでもないことになるんだろうなぁ・・・。ていうか、そもそも厳密解は存在するんだろうか?(ぉ