厳密解その2

質量mの物体に働く重力は地表近くではmgと表されるがこれは地球の大きさに対して動く高低差が低い場合にのみ有効で、一般的には
F=-G\frac{Mm}{r^2}
となる。これを、内側を正と取り、地球表面近く、つまり、地球半径Rを中心とする展開を行うと
G\frac{Mm}{(R-r')^2}
G\frac{Mm}{R^2}(1-\frac{r}{R})^{-2}
G\frac{Mm}{R^2}\sum_{n=0}^\infty n(\frac{r}{R})^{n-1}
G\frac{Mm}{R^2}(1+2(\frac{r}{R})+3(\frac{r}{R})^2+4(\frac{r}{R})^3+5(\frac{r}{R})^4・・・・
となり、ここでGM/R^2=gなので、
mg(1+2(\frac{r}{R})+3(\frac{r}{R})^2+4(\frac{r}{R})^3+5(\frac{r}{R})^4・・・・
となる。r/R→0とするとmgになることが分かるだろう。しかし、この補正の元で解いてみると、
ma=mg\sum_{n=0}^\infty n(\frac{r}{R})^{n-1}
a=g\sum_{n=0}^\infty n(\frac{r}{R})^{n-1}
となり、結局、質量にはよらない。つまり、重かろうと軽かろうと同じ速度で落ちることになる。なので今回の問題には影響しない。
ついでに両方まとめてみると、
a=(1+\frac{m}{M})g\sum_{n=0}^\infty n(\frac{r}{R})^{n-1}
となるのだが、どちらの方が影響が大きいか?ちょっと調べてみたところ、地球の質量M=5.972*10^24kg、半径R=6.378*10^9mなので、1kgの物体を1m落とす場合を考えた場合、なんと半径の影響の方が圧倒的に大きいのだ。半径の補正の3次まで取って初めて質量の補正が意味を成してくる。まあ、冷静に考えてみたら冷静に考えるまでもなくそうかもしれないけどやはりちょっぴり驚いたかな。
話は変わるが、実はこれだけ入れてもまだ答えが微妙だったりする。というのは、問題文の『同じ条件で地面に向けて落とす』という部分が微妙で、一緒に落とすのか、それとも別々に落とすかで答えが変わってくる。別々に落とした場合は今までの議論どおりだが、同時に落とすとなるとこれは3体問題になるのだ。ぶっちゃけた話、これだと定量的な厳密解は得られない。しかし定性的には同時に落ちることが予想される。が、この説明は小説のネタバレに直結しそうなので割愛します(ぉぃ